2008年12月に日本産婦人科医会がベセスダシステム2001準拠報告様式を冊子として発行してからすでに7年が経過しています。子宮頸がん検診のみならず病院等での診療現場でも、徐々にべセスダシステムの細胞判定用語が使用されるようになり、あわせてハイリスクHPV検査もASC-USトリアージや併用検診で活用されつつあります。
このカンファレンスでは、多くの方の参加を頂き、子宮頸がん検診におけるべセスダシステムの在り方について、関連学会等でも特に議論されることの多いASC判定症例を中心に症例検討の形式を用いて議論を深めました。
本HPでは症例とその解答および解説を当日のものより抜粋し掲載しております。
司会 :水無瀨 昻先生 (札幌臨床検査センター)
症例提供者 :原 まみえ様 (札幌臨床検査センター)
コメンテーター :小泉 基生先生 (EVEウィミンズクリニック)
コメンテーター :西川 鑑先生 (NTT東日本札幌病院)
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表層~中間層扁平上皮細胞主体の細胞像の中にクロマチンの増量は、あまり目立ちませんが核肥大した細胞が認められます。
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スライド1の強拡大となります。核肥大、N/C比が上昇し、核の大小不同が認められる細胞の小集団が認められます。
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こちらの細胞もクロマチン増量はあまり目立ちませんが、核肥大、N/C比上昇した旁基底細胞由来の異型細胞がみられます。
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ThinPrep標本の特徴である 細胞がバラけて出るシングルセルで見られます。核腫大し、N/C比上昇がみられます。
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スライド④と同じくシングルセルでみられ 核腫大、N/C比上昇がみられます。ThinPrepではシングルセルへの注意が必要です。
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弱拡大では比較的綺麗な背景ですが、従来法と同様に白血球も認められ、その中に小型で核濃染した細胞集塊を認めます。
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小型で核濃染した細胞集塊を認めます。
カンファレンス当日も正確な解答があり、投票でも20例中15例がASC-HとHSILであり、液状検体(ThinPrep)であっても、診断に大きな差がないと言える。ThinPrepではシングルセルが重要であり、その部分を考慮するとHSILの診断が望ましいと言える。
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中間層扁平上皮細胞主体です。軽度核肥大し核の周囲がやや明るくみえる細胞がみられます。
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クロマチンの増量は目立ちませんが、中層細胞よりやや核肥大した扁平上皮細胞を認めます。核周囲が明るく見えます。
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弱拡大で綺麗な背景の中に、表層系の細胞が多く認められます。やや細胞質が明るく見える舟状細胞に似ている細胞がみられます。
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スライド3の強拡大です。細胞集塊のなかに二核細胞がみられます。N/C比の増加やクロマチンの増量等は認められません。
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別な視野の強拡大です。核は小型で、クロマチンの増量および核の切れ込み等の所見をみとめませんが、細胞質が明るく見える細胞を認めます。
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細胞質が明るく抜けた細胞がみられます。ThinPrep標本の特徴である 細胞の重なりが無く、乾燥の影響も無い診断しやすい標本です。
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細胞質が明るく抜けて見え、ややN/C比が高くHPV感染細胞のコイロサイトーシスとしたい細胞ですが核異型が弱い細胞です。
カンファレンス当日も正確な解答があり、投票でも20例中16例がASC-USとLSILであり、液状検体 (ThinPrep)であっても、診断に大きな差がないと言える。この症例はHPV感染と捉えれば、LSILの診断が望ましく、少なくとASC-USの診断が必要であろう。